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転移する人格 心臓移植の細胞に記憶が宿る


「サッカー、バスケットボールが大好きなんです。声をかけられたら、いつだって参加してますね。それにメキシコ料理も今では私の大のお気に入りなんです。」そう語るのはハイメ・シャーマン(28)である。彼女は以前、運動することを嫌い、またメキシコ料理は何よりも苦手だった。彼女の好みはもっぱらイタリア料理 - 特にパスタが大好きだった。しかし三年前、心臓移植の手術を受けて以来、彼女の趣味嗜好は一変した。現在、アリゾナ州立大学の心理学科で学ぶ彼女は、心臓移植後に体験した自身の大きな変化に戸惑ったが、ある日、それが彼女だけの症状でないことを聞かされた・・・⇒Ranking
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医師の話によれば、彼女と同じように心臓移植を受けた人物が、手術以降、彼女のように大きな趣味嗜好の変化を体験したという。そして驚くべきことに、その新たな趣味嗜好は、彼に心臓を託してこの世を去った提供者(ドナー)のそれとピタリと一致していたというのである。それはあたかも、生前のドナーが受領者(レシピエント)の新たな肉体を得て蘇ったかにさえ思えたという。⇒Ranking

これは確かに気味の悪い話ではある。しかし現在、これら心臓移植を巡る人格や記憶の転移は数多く報告され、にわかに議論を呼びつつあるといいう。ここにもうひとつの症例がある。元エリートビジネスマンのビル・ウォールは5年前、シャーマンと同じアリゾナ州立大学で心臓移植を受けた人物である。ウォールはかつて自家用ジェットで各地を飛び回り、仕事に追われるその生活は多忙を極めた。しかしある日、病気を患って心臓移植を受けた氏の生活は、それまでとはまるで一変してしまったのである。⇒Ranking

今年58歳になるウォールは、かつてお金を得ることのみに費やしたそのエネルギーを今では競泳、そして自転車競技に費やしているという。そしてこれまでお金だけに固執していた日々がウソのように、今では慈善事業に専念しているというのである。⇒Ranking

また心臓移植後、ウォールはある不思議な体験をした。それは移植を終えて間もない日、それまで聞いたことさえなかった音楽 - Sadeの歌を聴き、理由も分からず眼に涙があふれたというのだ。"そんな感覚はそれまで想像もつかなかった"と氏はその時を回想している。⇒Ranking

ウォールは2000年2月に心臓移植手術を受けたが、移植後間もなく彼が聞いた話では、譲り受けた心臓は、交通事故で死亡したある貧しい少年のものだったと伝えられていたという。⇒Ranking

「始めはすっかりその話を信じていたんです。そして誰もそれ以上のことは私に言いませんでした。」⇒Ranking

これまで数年に渡り、同病院ではこうした心臓移植を含む臓器移植手術について、ドナーの情報は決して受領者側に伝わらないよう、様々な決まりが設けられていた。それは言うまでもなく、受領者に対する配慮である。しかし現在では、提供者かその遺族は受領者自身や、その家族に向け、手紙を書くことが許されている。そしてそれは移植から6ヶ月後、ドナーネットワークを通じてまず家族のもとへと手渡されることになっているのである。⇒Ranking

「移植から6ヶ月が経った頃でした。ドナーの遺族から手紙が届いたんです。そして手紙を読んで、私は本当に驚きました。心臓の提供者はハリウッドでスタントマンとして生きていた逞しい男性だったというんです。手紙には写真も添えられていました。彼は非常にハンサムで、引き締まった筋肉質の身体の持ち主でした。あまりにも想像と違っていたので、最初はからかわれているのかな?とさえ思ったんです。」⇒Ranking

しかし、それは事実だったのである。ウォールに心臓を提供したのはマイケル・ブラディ(芸名ブラディ・マイケルス)というハリウッドの一線で活躍するスタントマンだったのだ。生前のブラディは特に空中でのスタントを得意とするプロフェッショナルで、様々な有名な映画や TVコマーシャルに登場していたという。しかしあるテレビ番組の撮影準備中、ブラディを不幸が襲った。走行中の電車の上にパラシュートで飛び降りるスタントを行う為、準備していた途中で誤って足を踏み外し、頭部を打ったのだ。即死だった。そしてその心臓を胸に収めたウォールが、ブラディの両親から受け取った手紙には以下のように記されていた。⇒Ranking

「息子は信心深く、常に周囲を気にかける優しい子でした。私達は息子が生前、何らボランティア活動に参加できなかったことを悔いていたのを知っていたので、臓器提供することに同意したんです。」⇒Ranking

そしてウォールは手紙を読むなりすぐにブラディの両親に返信し、やがて彼らは面会した。初めて対面した彼らはすぐに打ち解け、今ではブラディの父親をして、"叔父のような存在"、とウォールは語っている。またその時、ドナーであるブラディの弟、クリスはウォールに奇妙な申し出をした。クリスは聴診器を持参し、ウォールの胸にそれを当てて、兄の鼓動を確かめたいと打ち明けたのである。⇒Ranking

「クリスが私にこう聞いたんです。"出来たら、もう一度兄貴と話してみたいんです"とね。私はもちろん同意しました。」⇒Ranking

そしてその後、クリスが何気なく口にした言葉にウォールは驚愕した。クリスは生前のブラディが音楽、特にSadeの歌を大好きだったことをウォールに告げたのである。それは紛れもなく、心臓移植後まもなくウォールが涙を流した歌だった。⇒Ranking

「本当に驚きました。こんな風にして繋がることがあるのか、私にも分かりません。ある人は移植後、私が単に以前よりも様々なことに対して繊細になっていただけだと言います。しかし、あるいは、ブラディが私の中で今も生きているんでしょうか?」⇒Ranking

現在、こうした逸話を裏付ける科学的な説明は存在しない。しかし仮説するならば、それはあたかも移植された臓器、そしてその細胞が本来脳に記録されているべき様々な情報 - 食べ物の好みや、行動様式 - を記憶していたかのようである。⇒Ranking

またこれらの記憶転移説に反論する科学者らはその原因を移植手術に伴う強度の薬物使用による副作用、あるいは心臓移植者(ドナー)の死に対する恐怖から来るトラウマ、心理的な転移であると主張している。しかし、それらの懐疑論者達もこの心臓移植患者の一部に発生する記憶転移現象が、これら仮説では説明しきれない何かがあることを認めているのである。⇒Ranking

「これは非常に難しい問題ですが、私自身、臓器を通じて記憶転移が行われている可能性を完全に否定することは出来ません。」アリゾナ州立大学医学部心胸科チーフのジャック・G・コープランド博士はそう語っている。氏は上述のシャーマンを含め、これまで過去25年間で700件以上の心臓移植手術を行っているベテランである。⇒Ranking

特性の転移
一方、上述のハイメ・シャーマンの体験は更に不思議なものだった。彼女がドナーの家族に会ったのは今から2年前のことである。その日、初めてシャーマンの顔を見た家族は余りの驚きにただじっと彼女の顔を見つめ、その場に立ち尽くしたという。⇒Ranking

「しばらくの間、私を見つめて・・(ドナーの)母親が言ったんです。"だって貴方が、余りにも息子に似てるから・・・"。」⇒Ranking

彼女に心臓を提供したのはスコット・フィリップスという名の青年だった。スコットは大の運動好きでカンザス大学時代はいくつものスポーツチームを掛け持ちしていた程だったという。しかし29歳のある日、スコットは町のバーで起きたケンカに巻き込まれ、頭を打って死亡した。そしてその心臓はシャーマンへと受け継がれたのである。⇒Ranking

シャーマンに変化 - 運動嫌いから運動好きへ - が訪れたのは心臓移植の直後である。無論、その時彼女はドナーについて何ら知る由はなかった。つまり、彼女の変化が家族の面会によるものである可能性は、全く考えられないのである。⇒Ranking

そしてシャーマンはごく最近、夢の中でスコットに会ったという。「彼に会ってお礼を言ったんです。そしたら彼が言うんです。"君のために力になれて、僕も本当にうれしいよ"とね。彼の存在をとても身近に感じました。彼は素敵な人だった、私には分かるんです。」⇒Ranking

そして自らの心身に起こったこの不思議な変化 - ドナーから受領者への特性の転移 - を、やがて彼女は自然のものとして受け入れた。⇒Ranking

「今は心理学科で学んでいるんですが、教授はきっと"全ては君の心の中の出来事である"、なんて言うでしょう。でもそういう科学者や心理学者の誰も、自分の体内に他人の臓器を実際に持っているわけじゃないんです。でも、私の身体の中にはあるんです。私は神を信じていますし、この世界には、何かまだ説明のつかないことがきっとあると思うんです。」⇒Ranking

そしてまたこうした臓器提供による特性の転移という現象は決して彼らだけに起こったものではない。⇒Ranking

バレーダンサーのクレア・シルヴィア(写真、彼女は「A Change of Heart(邦題:記憶する心臓―ある心臓移植患者の手記)」の著者)は1988年に心臓と肺の移植を行ない、その直後から心身の不可解な変化を体験した。移植後、彼女はそれまでに感じたことのない食の嗜好 - ビールとグリーンペッパー、そしてチキン・ナゲットに対して"理解し難い"食欲を示した。彼女はバレーダンサーという職業柄もあり、それまではそうした食べ物は軽蔑さえしていたにも関わらずである。そして移植からしばらくした後、彼女はドナーの遺族に面会し、ある事実を告げられた。彼らの息子、ドナーは若い自転車競技の選手で、彼女が移植後に欲したそれらの食べ物は、生前のドナーの何よりの大好物だったというのである。⇒Ranking

また医学誌に掲載されたある少女(8歳)のケースは更に奇妙である。彼女は幼くして命を落とした10歳の少年からその心臓を提供されたが、移植後まもなく、不気味な悪夢を見るようになった。彼女が見た夢には見知らぬ男の顔がはっきりと現れ、彼女はその顔を似顔絵として描いたという。そしてその後、恐るべきことが明らかになった。彼女が心臓を譲り受けた少年は、殺人事件の犠牲者だったのだ。そして彼女が描いたその似顔絵や場所の記述が手がかりとなり、少年を殺害した犯人が逮捕されたのである。⇒Ranking

細胞の記憶
これら心臓移植による特性、あるいは記憶の転移という現象は確かに現在の科学でもって説明のつかない現象である。スタンフォード大学医学部教授シャロン・ハント医師はこうした現象をして「フィクションですね。科学的に何ら説明がつきません。」と否定している。⇒Ranking

しかしコープランド博士はこれらの現象はあたかも「医学的なジョーク」のようであるとしながらも、確かに無視できない現象であることを認めている。⇒Ranking

「いかなる臓器移植であろうと、移植される際にはその臓器に含まれるDNAが同時に移植されることになります。その中には移植される臓器だけに関連したわけではない、別の部位、例えば脳に関連する遺伝子も含まれているわけです。こうしたことが引き金となって、心身の変化が訪れることは、可能性として完全に否定することはできません。」⇒Ranking

しかしまたコープランド博士は、こうした心臓移植の場合、いずれにしても受領者には大きな心身の変化が訪れることを指摘している。⇒Ranking

「心臓移植を受けた人々はそれまでの心臓病患者という立場から、ある日突然健常者になるわけです。これまでに見てきた心臓受領者には様々な変化があることを、我々は実際に確認しています。それは例えば移植を機にアスリートになったり、離婚したり、あるいは結婚したり、子供を産んだり、というような変化です。こうした人々は新たに得た健全な身体で、人生を再びフルに楽しもうとする傾向は確かにあるんです。従って、これらの現象が単にそうした一般的な移植後の変化なのか、あるいは実際にそうした現象が存在するのか、我々にも分からない、としか今は言えません。」⇒Ranking

こうした現象を巡り、ある科学者は、例えばステロイドのような抗拒絶剤を受領者が用いることが原因であると推測し、またある者は「病院内の噂話」にその理由があると推測している。それはすなわち、麻酔をかけられて移植を待つ患者が、医師らが口にするドナーについての情報を不意に耳にするというものである。また更にある者はそれを麻酔そのものの副作用であると推測し、あるいはただ単なる偶然であると推測する者もいるという。⇒Ranking

スタンフォード大学にて心臓移植を専門とする心臓病学者ジョン・シュロエダー博士はこうした現象について次のように語っている。「移植後の抗拒絶剤治療、そして移植前の精神的プレッシャーの重圧からなるコンビネーションは、確かに患者心身にとって非常に大きな脅威となりえます。いつもよりも感情的になりますし、例えば非常に涙もろくなります。あるいは何かの声を聞く人さえいるんです。従って、私自身は実際にはそうしたドナーの特性や人格が受領者の中に現れるということはまずあり得ないと思っています。しかしながら、確かにこの現象は不思議です。またそれら全てが単なる偶然のせいだと言い切ることは出来ないとも思います。」⇒Ranking

これらいくつかの推測のうち、現在最も物議をかもしているのは「細胞記憶理論」、そして「組織的記憶理論」である。これらは即ち、細胞や原子、さらには分子それ自体が生体の記憶やエネルギーを保持し、この場合においては心臓移植によってその情報が臓器と共にドナーから受領者に転移するというものである。⇒Ranking

これらの理論を唱えるアリゾナ大学ヒューマン・エネルギー研究所長の心理学者ゲイリー・シュワルツ博士は、かつて心臓移植を受け、移植後に不可解な変化を体験した10人の患者を調査している。その中には例えば、女性から心臓の提供を受け、移植後に突然ピンク色が好きになり、香水に興味を抱いた男性患者などがいたという。⇒Ranking

「これらの患者に起こった変化は、単に人格的なものだけではありません。非常に特定的な人格変化が起こっているんです。薬物投与や、精神的ストレス、単なる偶然によって、そうしたドナーの人格にマッチした特定的な変化が受領者に及ぶことは考えられないんです。」⇒Ranking

この博士の主張を裏付けるように、確かにこれらの変化を体験した受領者全員が、移植前後、ドナーについて何ら情報は得ていなかったのである。⇒Ranking

しかしまた、今日こうした移植を行う専門の医師の大多数、そして実際に移植を受けた受領者の中にも、この現象に対して疑問を呈するものは多い。⇒Ranking

「心臓は言わばポンプであり、それ以上の何者でもありません。まして感情を送るような機能は備えていないでしょう。」そう語るのは1989年に心臓移植を受けたパティ・クック(68)である。氏は現在、心臓移植患者をサポートする組織(NewHeartSociety)の代表を務めている。「こうした現象については、以前にテレビで見ましたが、番組に出ていた患者は、ただ単に変わったことを言って目立ちたかっただけでしょう。信用できません。」⇒Ranking

一方、2000年に心臓移植を受けた心理学者のニーナ・ギブソンはこれらの現象は心臓移植にまつわる根本的な問題であると前置きしながら、その原因はドナーについて情報を知っているか知らないか、その一点にかかっていると話している。⇒Ranking

彼女が心臓を譲り受けたドナーは21歳の青年だった。彼はある晩、バイクの後ろに乗って事故にあい、間もなく死亡した。そして遺族は死亡後直ちに、息子の身体に残された健全な臓器全てを移植用に提供することを申し出たという。そしてギブソンは彼の心臓を譲り受け、現在に至る。⇒Ranking

「私は今でも、例えばバイクに乗ったり、健康増進について何か特別なことをすことに興味はありません。しかし、彼の遺族が事故の夜に臓器の全てを提供することに同意してくれたお陰で、今でも何人もの人が生きているんです。悲劇の真っ只中にあって、大変な決断だったと思います。誰かのお陰で自分が生き延びて、後でその人物について何かを知ることは、とても大きな影響を受けます。その人物が何をしていたかを知れば、生き延びた自分は何かをしなければならないと思うでしょう。私は移植後も、ドナーの遺族には一度も面会していませんが、彼らの息子と私の間にはとてつもなく強い繋がりがあるんです。それは貴方が死ぬまで、決して分からないことでしょう。私に言えるのは、ただそれだけです。」⇒Ranking

果たしてこうした現象が本当に「細胞の記憶」転移によるものなのか、あるいは単なる極限的な状態における心理的作用なのか、現在真相は定かではない。しかし、もしシュワルツ博士が言うように、臓器が記憶を保持し、それが転移可能であるとするならば、我々がこれまで信じてきた"科学的事実"は - 再び - 大きく覆されることになるのである。⇒Ranking

我々の肉体は、果たして本当に、ただの"入れ物"に過ぎないのだろうか?⇒Ranking





『侵入者』と題されたこのテクスト(以文社刊、二〇〇〇年)で、ジャン・リュック・ナンシーは自分の身に起きた複雑な重層的「侵入」という事態について語っている。まず、自分の心臓が機能不全に陥って、自身の身体のなかの「異物」となる。そこで外部から他人の心臓を受け入れることになるのだが、これは同時に「招かれざる客」であり、身体はその「自己性」を保つため「侵入者」を排除しようとする。だがこの「侵入者」は、まさに身体の生存に不可欠だからこそ「招かれた」のであり、「私の」身体が生き続けるためにはこの「侵入者」を排除するのではなく、逆に排除しようとする力を、つまりは「私の」免疫作用の方を抑制しなければならない。言いかえれば「私の」身体の「自己性」を、あるいは「固有性」を希薄にしなければならないということだ。(中略)そうなるともはや、身体は「私」に固有のものではなく、また「私」が「私」である根拠もなくなってしまう。「私」の意識はこの身体の生命持続に依存しているのだが、この身体はもはやその「固有性」を希薄化することなしに存続しえないからだ。「私」はただ、「私のもの」ではなくなる身体で演じられる複合化のドラマに、みずから深く感化されながら立ち会う、出来事の慎ましい(というのは、事態を統御する力をもたないから)証人であるほかないのだ。⇒Ranking




またこうした現象に類似した、記憶の転移というコンセプトは19世紀後半にも報告されている。以下は、1886年ポピュラー・サイエンスマンスリー誌に掲載された記事の抜粋である。⇒Ranking

この程、シカゴの医師H.D.ヴァリン博士が報告したいくつかの「記憶の転移」現象は、リボー(心理学者・仏)が報告したわずかな症例を除けば、おそらく信頼に足る初めての実例として極めて興味深いものである。⇒Ranking

中でも最も不可解な症例はある少女のものである。その少女はフランス系カナダ人の父親、そしてドイツ系移民の血を引く母親の間に生まれた。少女の外見や特徴は父親に良く似ていたという。両親は少女をドイツ語、そして英語のみの環境の中で育てたが、奇妙なことに、少女が生後5ヶ月の時、初めて口にしたのは"mouman" - それはフランス系カナダ人における"maman(お母さん)" - であり、また生後8ヶ月の時には更に"yes"や"no"といった言葉を覚える代わりに、両親さえ決して使うことのなかった"oui"、そして"non" (仏語における"yes/no")を口にした。⇒Ranking

そして1歳になったある日、彼女はプードル犬をプレゼントされたが、今度はそれを"Nanan(フランスにおける幼児語のキャンディーや甘いもの) "と呼び、また他にも"bon(英語におけるgood)"や"pus(フレンチ・カナディアンにおけるPlus)"といった言葉を当たり前のように使ったという。父親によれば、これら6つの仏語は彼が子供の頃に良く使っていた単語であるという。また少女が発音した"u"(フランス語において最も特徴的な発音を要する音)は完全にフランス人のそれであり、また"non"や"nanan"における鼻音は、母親でさえ真似ができなかったと話している。⇒Ranking

こうした記憶の転移は他の動物にも多く見られるものである。例えば鳥は生後間もなくして電線を避けて飛ぶことを学ぶ。また哲学者のチョンシー・ライトは"夢の中に現れる未知の土地や人物を、転移された記憶によるものである"と引用している。そしてヴァリン博士はこれらの現象から自身の実体験を参照し、次のように語っている。⇒Ranking

「私の母親は私が産まれる直前、彼女が生まれ育った美しい田舎町を訪れたそうです。そして私はその町を初めて訪れたとき、そこを訪れたことを強く記憶していたんです。私はその時、例えばそこの角を曲がったら次に何があるか、明確に言い当てることが出来ました。つまりその町をはっきりと"覚えて"いたんです。このことを知り合いに話すと、彼らは皆、私がその話を母親に聞いたからだろう、と否定しました。しかし事実は違うんです。私の母親は、私が生後 9ヶ月の時にこの世を去ったので、私は町の様子について誰からも話を聞いたことはなかったんです。」⇒Ranking

そしてまたヴァリン博士は、今回調査したある別の少女のケースについて次のように報告している。⇒Ranking

「その少女は叔父のお葬式の様子をありありと覚えていました。その葬式は彼女が産まれる以前のことでしたから、彼女はその様子を知る由はありません。その葬式には彼女の母親が参加したんですが、少女はまだその時、母親のお腹の中にいたんです。また少女は初めて叔父の写真を見たとき、"この人を見たことがある"といったそうです。」⇒Ranking
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